踊りませんか。

きれいなもの至上主義

月組公演『今夜、ロマンス劇場で / FULL SWING!』感想①芝居篇

かなりしばらくぶりですが長文を書こうと思います。長文を書く能力は書かないとどんどん衰えていくので……。とはいえTwitterで随時垂れ流していた感想のまとめ版という感じなので、新しいことはほぼ言わないと思います。

※ジェンヌさんは愛称で呼びがちですが一応初出時は脚注*1で芸名を添えます。

贔屓がトップスターになった件

もうかなり今更なタイミングですが(発表はおよそ1年前、就任もなんと半年以上前(!))贔屓がトップスターになりました。ずっと(わたしが)お慕いしていたうみちゃん*2と組めて正直ハッピーしかない。トップさんになったことはさておき、相手役さんという存在について今まではその重要性を認識しきれていなかったのだなと感じたのがいちばんの驚きだったように思います。相手役さんというのは『トップの重荷を共に背負ってくれる人』なのだなと実感しました。うみちゃんはスターさんとして既に自立されており名実ともに組を引っ張る一人であることも要因のひとつであるのかもしれませんが、贔屓が一人で重荷を背負っているのではないという安心感がなんだか半端なかったです。贔屓からの信頼も厚いようなので(むしろ積極的に甘えにいっている印象すら受ける)末永くご一緒できるといいなと願っている……。贔屓が自分のお披露目、ではなく二人のお披露目、というスタンスでいてくれるのも安心材料になったような気がします。

プレお披露目『川霧の橋 / Dream Chaser』は

  • 名作の初再演
  • たまきさん*3、さくらちゃん*4の退団公演の再演
  • トップさんとしての初舞台

ということでわたしもだいぶ肩の力が入っていた。こっちについても順番は逆転しますがいずれ感想をまとめたいと思います。博多に23泊したのですが、自分の向き不向き(とにかく外泊に体力を削られる)がよく分かったのがいちばんの収穫でしたね……贔屓と月組さんはとにかくよかったです……。

というわけで満を持してのお披露目公演、発表されたときは「あ〜綾瀬はるかが可愛い洋服着るやつね」という認識&ちぎさん*5お披露目の時と同じ演出家陣だな、という程度の感想だったのですが(よぎるファンシーガイのメイベリン)、先行画像が可愛かったのとポスターが非常によかった。お花畑とお姫さまと星空とで夢みたいにきらきらしているのに青みがかった色調補正のせいかどこか切なくて懐かしい感じで、期待がすごく高まりました。あとわたしとしてはヅカヲタ人生初のお正月公演だったので(前年末から年明けにかけての公演は2020〜2021年で経験済み)楽しみ半分「元旦から遠征きつっ」半分といった気持ち。実際正月休みの全てが遠征に消えたので結構大変でした。仕事も忙しかったしな……。

で、公演の幕が開いてみて、お芝居もショーもすごく楽しくて泣けてジーンとしてとっっってもいい公演でした。というわけで、この感想を長文で残しておかねばと思った次第です。公演も終盤だしバンバンネタバレしてるのでご注意ください。

今夜、ロマンス劇場で

総評

いやまじめちゃくちゃいい話では?ロマンチックファンタジーそのもの。映画もムラと東京の間で視聴したのですが、いいところを上手く残しつつ舞台という形にアジャストする手腕がさすが小柳先生。よりメリハリが効いてテンポ良く観られる作品に仕上がっていたと思います。舞台芝居の特性か、キャラクターも総じて明るく純粋さが際立つ人物造形になっていた印象。美雪以外の映画の登場人物たちもこっちの世界にやってくることでよりファンタジックにコミカルになっていたし、嫌な人がひとりもいないところもいいファンタジー感。

構成

前述したテンポの良さが際立っていて、毎回気付けばクライマックスでした。繰り返し観ていると体力消耗もあってどんなにいい作品でも一箇所くらい集中力切れがちな場面って出てくると思うんですが、今作はほぼほぼそれがない。緩急が上手。楽しくてアップテンポなナンバーがうまい具合に挟まることでショー的な気分で集中を切らさず観続けることができるのと、なにより俊藤の存在がデカい気がしますね……。俊藤が出てくると問答無用で笑ってしまうし場面の進行があっという間。さすが大スター!(勉強になります!!)もう少し細かいレベルでもすごく間がよくて、悪魔祓いのナンバーからの爆発→「牧野健司、クビー!」「俊藤さーん!!!」ピーポーピーポー……(暗転)の流れのテンポが良すぎて毎度暗転するたびに笑ってしまう。嵐のような怒涛の展開。笑っちゃうところもさることながら、クライマックスで健司と美雪の場面に入る前に本多さんの過去を思わせる場面を挟むことでモードチェンジするところなどももはや匠の技だなと思いました。またるうさん(光月るうさん)が相変わらずめちゃくちゃ上手いから効果抜群。

ストーリー・演出

ストーリーはシンプルながら感動的で、健司の選択は(わたしは初見時映画を未見だったので特に)ポジティブな驚きがありました。演出で何より好きなのは二人の間にある愛を他の "普通" と言われるカップルと並べて描いたところで(シナリオハンティングとか、その後のふたりのとことか)、アセクシュアルの肯定だよな〜と思いました。二人の間に「(性的な意味で)触れたい」という欲求があったのかどうかは誰にも分からないけど、触れ合わない二人の間にある愛も形は異なるかもしれないが他となんら遜色のないものであるというメッセージが伝わるいい演出と素敵なラストだったと思います。

セット・お衣装

60年代が舞台なだけあってレトロで可愛かった!特にお衣装、美雪さんのだけじゃなく塔子さんも可愛かった。わたしは塔子さんが着ていたストライプのワンピースが帽子とか靴とかとのコーデ含めて全部好きです。セットもカラフルなレトロポップで、モノクロの世界との対比を付けるためにあえて現実世界はちょっと過剰なくらいカラフルにしてるんだと思うんですが作品全体が楽しげになるという点ですごく効果的だったと思います。GRAPHの対談で「健司の記憶ではあんなふうにカラフルで可愛い感じだった」みたいな言及があったのもよかったな。作品自体が "健司の記憶" だと考えるとものすごく愛おしい話じゃないですか?舞台も人も健司にはああいうふうに見えてたんだな……と思うとめちゃくちゃ素敵。すごく優しい世界だなと思って見ていた話が急に「お前にとって世界はこんなに優しかったのか!!」になるというか。撮影所とかも、実際の姿とはかけ離れていたとしても健司にとってはあんなに愉快な職場だったんだなと思うと……もうね……。嫌な奴が一人もいない点も健司の人のよさに収束していくので、結果として健司がすごくいい奴だったことが伝わる見方だなと思います。

場面別感想

ここからは場面別に感想を述べます。既に結構長いんですけど場面別の感想に続いて人物別にも感想を述べますのでお覚悟を……。

第1場 現代・病院

わたしの推し下級生は美海そらちゃんと静音ほたるちゃん、あと最近白河りりちゃんも癖になってきているのですが、いきなりそらちゃん出てきたと思ったらりりちゃんも出てくるので嬉しい&可愛い。が、あの病院は正直検温だの血圧測定だの忘れすぎだと思います。人が死ぬど!

第2場 プロローグ

華やかな舞踏会。映像がフェードアウトして舞台に移り変わる演出、センターから見たらすごく素敵だろうな〜!と思いました。サイドからだとちょっと像がズレちゃうけどまあそれは仕方ない。映像のうみちゃんがまあめちゃくちゃ美しくて既に姫としての説得力しかない。モノクロの世界に迷い込んだフルカラーの健司がはしゃいでいる様子も可愛かったです。たぬきちと手を振りあっているのが特に好き。ちょうどいい異物感とちょうどいい親しみ。

余談ですが「決められた振り付けに沿って動いている人物たちの中でひとり自由に動く」という演出でエリザベートの冒頭を思い出しますが、あのときよりずいぶん自由に動いている感が増したなあとたまに思ってはしみじみしています。

第3場 京映スタジオ・1964年

おださん*6がいきなり上手い。人別感想でも触れるつもりですがお衣装の着こなしなのか補正が上手いのか、大柄ではないのにちゃんと男性の身体つきに見えるんですよね。京映のナンバーが楽しすぎてめちゃくちゃ愉快な職場だなと思うのですが、前項で触れた "健司の記憶" ではこうだったのだと思うとそこにノスタルジーも加わってもはや泣ける。下手花道で台詞が全然覚えられない芝居をしているがっちさん*7がすごく好きです。毎回見ちゃう。制作陣がカテゴリーごと(裏方たち、俳優陣、助監督たち……)に次々前に出てきてポーズを決めるのも楽しいし、前場に引き続き自由に動いている健司が助監督の並びに自然な流れで参加しているのが仲間感あっていい。トップさんなのにあのメンツにわりと馴染んでいる(でも主演だということは分かる)ところがさすがの芝居巧者。そして真ん中に出てくるみちる*8!!ようこそ月組へ!という気持ちとともに、月組でみちるが見られるなんてなんという贅沢……という気持ちに。相変わらず鬘とアクセサリー合わせのセンスがいい……!あとすごく細かいツボですが衣装デザイナーの名前が林英恵なのちょっと笑いました、森英恵じゃん

そして満を持して登場するハンサム・ガイ、俊藤龍之介。登場と共に拍手が起きるのはそれが二番手さんだからというだけではなく、客席が普通に喜んじゃってるからでは。拍手をさせる説得力が登場の時点である。そして小柳先生本当にちなつさん*9の脚の長さ好きですよね。「僕のスター性がま〜ったく生かされてないよ」、大喜びする小柳先生が見えるかのようだ。そして連発される名言の数々、去り際の「俊藤さんお帰りでぇす!×3」「あばよ」のテンポ感……。ここだけでもう全員俊藤の虜。あとわれらが白雪さち花さん演じる萩京子も全然台詞ないのに既に強烈。目が離せなさすぎる。原作映画に萩京子いないと知ったときは大草原不可避でしたね。絶対いた方がおもしろいよ……分かるよ……(舞台だからこそ成立する役回りだなとは思います)。

伸太郎が去り際にタライをかぶってみたりしてひと芝居しているところも芝居の月組って感じですごく好きです。健司が銀橋に出てきちゃうのであんまりちゃんと見られてないんですが芝居が細かい!伸太郎は塔子さんを評して「笑顔がラムネみたいにシュワッと弾けてる」というところも好きで、意外と情緒がある奴だなと思えます。

第4場 ロマンス劇場

本多さんご登場。るうさん、もはや存在感がほとんど柄本明本人なんだよな。事務室?に飾ってあるポスターのタイトルが『自我』なのが気になります。自我……?

そして美雪姫と三獣士たち。お姫さまが終始好戦的で三獣士がかわいい担当というバランスが好き。大蛇丸さまも実はビビりらしいし(歌劇誌より)、ほのぼのトンチキ作品だったことを感じます。美雪がお転婆の域におさまっているかどうかは微妙なとこですがわたしは好きです。あれを「とびっきり魅力的!」と言う健司は当時としてはめちゃくちゃフラットだなと思います。大蛇丸さまのネチネチぬるぬるが比喩じゃなくて物理っぽいとこが気になる。蛇の化身かなんかなのかな……

第5場 ロマンス劇場・劇場前

朝陽つばさ劇場。気付いたら毎回自由にアドリブしてて毎度笑わされています。朝陽くんについては人別のところでまた触れます。その直前の「あれはヒトです!指差さないでください」がすごく好き(困っている贔屓が好きという困った性癖があり……)。指差さないでくださいって言うわりにご自分もよく人のこと指差しますけどね笑。映画からずっと好きだった人が出てきちゃったというなんらかのコンテンツを愛する人間にとっては夢みたいなシチュエーションですが、実際そうなったら驚くじゃ済まないよなあ。びっくりしつつ美雪が好き放題動くのでとりあえずそれに対応せねば(でもこの状況は受け止められていない)という心情がよく伝わってきて、月城さんのお芝居のそういうところが好きだなあと思います。心情表現が緻密。

第6場 健司の部屋

作中最も好きなツッコミは「一応室内なんですけどね」です。寝落ちする美雪の表情がキラキラしていてかわいいし、触らないように慎重に布団をかけてあげる健司が優しい。触れたら消えるというのを知らなくても不用意に触らないようにする健司、人として真っ当である。作中通して健司が自分から他人にあまり触らない(気軽に触るのは伸太郎相手のときくらい)のがここの説得力に効いてきている気がします。

第7場 京映スタジオ

怒涛すぎて笑ってるうちに終わってしまう場面。本当にここのテンポが大好き。ミュージカルになって一日で撮影に入れる俊藤すごいな。「よしっ、じゃあ本番だ☆」とか「いえいっ☆」とか終始機嫌が良さそうなところが俊藤のいちばん好きなところです。勉強になります!

おはねちゃん*10の休演に伴いりりちゃんが淡路千景役の代役に入ってますが、歌い方がソウルフルで好き。歌唱力があるから面白いんだよな……。そういえば今回結構みんなに役名がちゃんと付いてますが、やっぱりじいやに「脚本家の怠慢じゃな」と言わせた以上みんなに役名を付けてあげなきゃってことなんですかね。

第8場 街角

朝陽つばさ劇場再び。日によって言い方が違って面白い。一人でBGMもない中場を持たせるってなかなか大変だと思うんですけど、さすが芸達者だなあ。

そして健司と美雪の恋がぐっとリアルになる大事な場面。健司の人柄もすごくよく伝わるし、この人フニャフニャしてるだけじゃないんだなあと思えます。美雪に腹を立てるのってあれくらいされたらまあ仕方ないとも思うんですが、八つ当たりしていることに自分で気付いたうえで「ごめんなさい」と謝って、そのうえ「あなたはそのくらいがちょうどいいです」って肯定できるの並大抵のことではない。健司の人柄が見えると恋に説得力が生まれるなあと思います。

第9場 映画内の城の一室

大蛇丸さまの「ず〜〜っと待っておったが」がどんどん長くなっていく。ここの表情が日増しに豊かになっていってて、ありちゃん*11またお芝居が2段階くらい上手くなったなと感じました。衛兵(澪あゆとくん、一輝翔流くん)もだいぶ下級生というか片方研1(!)なのにいい味出してる。

第10場 京映スタジオの片隅

助監督がまたいい奴らなんだよなあ、仕事は押し付けてくるけど気のいい人たちだと健司が認識していたと思うとほっこりする。学年的には結構月城さんより下の若手が多いのに、その中に馴染みつつも主演らしさは失わない月城さんもすごいしかなり学年が上のトップさんにめちゃくちゃ絡んでくる七城くん*12すげーなと毎回思っていました。毎回絡み方が違うのもまたすごい。助監督のナンバーはまさに「次のこの世界を担う」人たちのものなのでにこにこしちゃう。荒削りながら勢いがある感じが設定と合っていてよかったです。

からんちゃん先輩*13とみちるのアドリブも可愛くて大好き、お父さんと娘がああいう会話ができる関係性なのってあの時代だと珍しいよな〜と思うので、勝手に塔子さん幼少期の育児は社長が担当していた説を唱えています。マジで1000%妄想ですが……。

第11場 シナリオハンティング

もの集めのナンバーが幸せすぎてくらくらする。あなたと見る世界の美しさを数える歌だと思っています。たとえ触れられなくてもこんな遊びをしてずっと笑い合えるならそれはとても尊い関係だし間違いなく愛じゃない?と思います。ここのうみちゃんのお衣装が本当にかわいい。

第12場 健司の部屋の前

塔子さんの「東京、楽しんでくださいね」が効いている。塔子さんが間違いなくいい人であればあるほど美雪の「触れられない」という制約が重くなっていくので、ラストのカタルシスが爆上がりします。美雪のナンバーは悲しくて切ないんだけど、銀橋でスポットライトに照らされるうみちゃんがあまりに美しいんだよな〜

第13場 健司の部屋

美雪のシリアスなナンバー直後にこれを持ってくるバランス感覚が絶妙。大蛇丸さまご一行のアドリブもタンゴも面白すぎて大好き。ぱるくん*14なんであんなバカの顔するの上手いんだろう。バカの天才……

第14場 京映スタジオ

先にも述べましたが塔子さんのお衣装が可愛すぎる!!そして連獅子。慣れるまで連獅子のインパクトでなんも頭に入ってこなかった。伸太郎がめちゃくちゃいい芝居してるんですけどね……。伸太郎、恋(までは行ってなかったかもだが)も仕事も健司に取られた形になってるのに健司に辛くあたったりしないところが本当にいい奴だ。

俊藤の檄は謎の大スターのパーソナリティが少し垣間見えて、また俊藤のことが好きになってしまう。俊藤が言う「男が簡単に下を向くな」、あんまりマッチョ感がないのはおそらく「男たるもの」というところにそんなに重きが置かれていないからだろうか。今回は健司が男性だから「男が」って言ったけど、相手が女性だったら「女が」って言いそうな印象。

ていうか連獅子……なんで連獅子……(好き)

塔子さんと伸太郎のくだりはすごく地に足のついた部分でそこもよかったなと。嫌な言い方したら恋の傷を癒すために手近な男で手を打ったってことになるのかもしれないけどそういうことから始まる関係だって全然あっていいし、夢を諦めない理由だって憧れの女の子がこっちを向いてくれそうだからくらいでもいい。そういうとこも含めて優しい話だな〜と思います。

第15場A ロマンス劇場・劇場前

前述の通り、本多さんのエピソードをここに挟んでくるところが上手い。これでぐっとモードチェンジできて、クライマックスにすんなり入り込めます。

劇場前で並んでいる人たちの端っこにいる一輝翔流くん、なんか目に入るんだよなあ……これがスター性か。将来が楽しみですね。

第15場B ロマンス劇場・場内

健司の「見つけましたよ」が最後の「見つけてくれてありがとう」とオーバーラップする。こういう細かい仕掛けいいなあ。「カラフルな思い出を作ろう」のところで銀橋を照らすライトが5色に光るのが素敵(たぶん7色にしたかったんだと思うけどライト5つしかないので5色になったのか…笑)。ディアナさまの存在感がなんだかちょっと面白い。

第16場A 回想

もう初回見たときここでだーだー泣きました。内容でもだけど、月城さんのナレーションが優しくて……。二人で過ごした時間の愛おしさ、かけがえのなさがすごく伝わってきて、健司と美雪はこの選択を正解にできたんだなあと思えて泣ける。触れずに、でも一緒にいるという選択はその後の方が難しくてだからこそ二人のその後が尊い。あとあやおと*15に眼鏡かけさせるのはずるくない?

第16場B 現代・病院

「いつもの遊びをしよう」がもうとんでもなく好き。いつもふたりでこの遊びをしてこのおよそ60年を生きてきたのだと思うと……。老人と美女の構図って大蛇丸さまが切り捨てたように醜悪さ(というか変な感じの "男のロマン")を感じることもあってちょっとウエッとなったりするんですが、このふたりはむしろ正反対に人と人としての尊重と労わりと柔らかい愛情が感じられてすごく素敵だと思いました。

第17場 エピローグ

モノクロ映画にカラフルな色がついて、という流れがまさにColor Me True(英題)で素敵。もうスーパーウルトラハッピーエンドで嬉しかったです。

人物別感想

ここまでで充分長いんですが、ここからはキャラクター別の感想です。一部敬称略。

牧野健司(月城)

全体を俯瞰したうえで最適なあり方をとるのが上手いのは相変わらず。こういう受けの役回りって地味になりがちだと思うんですがちゃんと主演ですごい。芝居の上手さを「どうだ上手いだろ!」にならずに示せるところが本当に上手い人だなとつくづく思います。わたしは月城さんの演じる優しい弱めのキャラクターが大好きで、それは柔らかいところを前に出したときに芯の強さが見えてくるからなんですが、今回も多分に漏れずそのパターンですごく好きでした。ご本人が「役との共通点全然ない」って何度も言ってるのもおもしろくて好(ハオ)。意志強そうだもんね

美雪(海乃)

映画のお姫さまという異世界の人物感と、健司と恋に落ちることの説得力≒人間味を両立していてすごい。見た目の美しさだけではなく所作や佇まい、雰囲気の高貴さで「あーお姫さまなんだあ〜」と自然に思える感じ。動いて喋ると好戦的ですぐ手が出る一方色づいた世界にはしゃぐ無邪気さが可愛い。うみちゃんのスッと伸びた背筋が好きです。学年が上で経験の多いトップ娘役さんってどうしても大人っぽいお役を当てられがちだと思うんですが、こういう可愛い役だってドンと来いだぜ、となぜかわたしが誇らしい気持ちになりました。可愛さ瑞々しさだって技術なのだ。

俊藤龍之介(鳳月)

俊藤嫌いな人この世にいる?とめちゃくちゃ主語が大きくなりましたが、そのくらいの大スター、俊藤。好きということ以外あまり言うことはないのですが、情報量をあえて絞ったちなつさんのバランス感覚に敬服します。ずっとご機嫌でかわいい。俊藤が鬼になったところも見てみたいしレッツゴーハンサムガイもなんかあらすじだけでも教えてほしいですね。

大蛇丸(暁)

スチール見たときトート閣下かと思った。公演が進むにつれてどんどん人間味(人間なのかわかんないけど……)が増して、可愛くなってってる気がします。健司に知られてて喜ぶし重要な情報を教えてくれるしふたりの恋路を邪魔するわけでもないし、普通にいい人だ。雨霧狭霧と一緒にその後もちょくちょく押し入れからやってきてお茶して帰ってほしいですね。

成瀬塔子(彩)

も〜とにかくかわいい、お衣装そのものも可愛いし着こなしも素敵。ちゃんと撮影所で働いていて有能そうなとこもいいです。前述のとおり塔子さんが素敵な人であればあるほど話のカタルシスが大きくなるけどヒロインを食ってしまうほどではないバランスがよかったです。

山中伸太郎(風間)

100期……100期!?って毎回思ってますが、月城さんと並んでちゃんと兄貴分に見えるのがすごいです。お衣装のダサセーターが可愛い、おださんがセーター着てるとこ見たくない人いないでしょ。短躯の男性特有の色気みたいなものが出せるのはアレ一体なんなんだろうなと常々思っています。

三獣士(蓮・英・柊木)

芸達者が3人揃って可愛い担当してるのが可愛すぎる。『お転婆姫と三獣氏』がわりとトンチキ作だったんだろうなというのが3人の佇まいで分かるところがいい。このちゃん*16休演から復帰できて本当によかったです。代役でたぬきちが朝陽くんになったとき、うーちゃん*17がちょっとお芝居変えてバランス取ってて面白かったな。あと「クルックー」だけでわりといろんなことを伝えてくる柊木絢斗くんさすがでした。

雨霧狭霧(天紫・礼華)

結構長めのアドリブを毎公演やるの大変だっただろうなー!いつかセクシーコマンドーをやり始めそうなノリでしたが、映画の世界観がよくよく分かってよかったです。バカな子ほど可愛いを地で行く。

京映の人々

偉い人たち(千海・夢奈・佳城)

社長、あんまり台詞は多くないのにすごく情報量が多いので目が離せません。「観客の笑顔がわが社の力」がギリギリ嘘じゃなさそうな、それでいて商業主義にも乗っかってそうな佇まい。一方で塔子さんのことを大事にしているお父さんの顔も強くて、俊藤に振り回されてる感もあり……。さすがからんちゃん先輩。清水くんはシュッとしててカッコいいし監督はクセつよで、こんな職場なら確かに愉快だろうなと思いました。

助監督(一星・大楠・瑠皇・真弘・七城・和真)

まさに若い力って感じで見ていて親みたいな気持ちになってしまう。次のこの世界を担うのは君たちだよ……元気にいっぱい食べてすくすく育ってほしいです。新生児扱いしてすいません。歌劇の楽屋日記で和真あさ乃くんが各助監督の作品についてレポートしてくれてるので面白かったです。るおりあ*18の作品『ムカデと女』に戦慄しました。む、ムカデ……

セブンカラーズ(結愛・桃歌・蘭世・菜々野・白河・羽音・咲彩)

アイドル的なグループなんだと思うんですがダンスがかなりキレていて好き。動きがキビキビしているしみんな背中の筋肉がすごい……。俊藤が取材受けてる後ろでわちゃわちゃしてるのが可愛いです。たまに助監督といちゃついてたりするのでおおらかな時代だったんですね(?)

街の人たち

本多正(光月)

本多さんにも健司と同じ経験があったと知ったときの涙腺の緩み方がやばかった。「後悔はないさ、でもときどき……無性に寂しいんだ」に感情の襞がこれでもかと詰め込まれていて込み上げるものがあります。るうさんが達者すぎて舞台が締まりまくる現象は相変わらずです。どうしたらこんなに上手くなるのだ

警察官(朝陽)

朝陽くん、『雨に唄えば』でやすのちゃん*19の代役に入ったときはけっこうな上級生さん二人に振り回されていた感じだったのに(でも当時の学年としてはめちゃくちゃに頑張ってた、そもそも代役ですしね)その経験を経て舞台度胸やらなんやらが飛躍的に伸びていてすごい。たぬきちの代役も準備は短期間だっただろうに自分の役作りで臨んでいて本当にお芝居が達者な子だなと思いました。

駄々っ子(涼宮)

役名はこんなじゃないんですが、シナリオハンティングの場面で買って買ってと駄々を捏ねるあの子。可愛いんだよな〜子供にしてはでかいけど……。涼宮蘭奈くん、川霧の橋で船頭のお役をやってたとき二日酔い芝居でシワチュウ*20みたいな顔してたのが印象的でした。かわいい

 

というわけでこの時点で1万字を超えてしまったのでショーの感想は別記事にします!長くなりすぎた!

*1:これ

*2:海乃美月さん

*3:珠城りょうさん

*4:美園さくらさん

*5:早霧せいなさん

*6:風間柚乃さん

*7:空城ゆうさん

*8:彩みちるさん

*9:鳳月杏さん

*10:きよら羽龍さん

*11:暁千星さん

*12:七城雅さん

*13:千海華蘭さん

*14:礼華はるさん

*15:彩音星凪さん

*16:蓮つかささん

*17:英かおとさん

*18:瑠皇りあさん

*19:佳城葵さん

*20:シワシワのピカチュウ